深層学習を使用した穀物・野菜の病虫害検出法

病虫害検出

画像に写っている物体を分類したり、物体を検出したりするのに、深層学習を使うことが一般になりつつある。深層学習による物体分類や物体検出は、工学の分野にとどまらず、農学の分野にも応用されるようになった。例えば、小麦を撮影した写真から穂を検出して収量予測を行なったり、雑草を判別したり、植物の写真から病害部位を検出したりするなど多岐の課題に応用されている。この背景としては、専農者の減少や植物病理学分野の人材不足などが挙げられる。画像解析(あるいは時系列モデリング)などの手法を利用して、収穫期を精度よく予測できたり、病害虫を早期発見できたりすることは、農家の作業負担を減らし、経済損失を事前に防ぐことが可能にある。

バナナ病害の検出

深層学習による物体検出を農業分野の課題に応用した事例として、バナナの病害検出がある(Selvaraj et al, 2019)。この論文では、約 3 万枚のバナナ病害画像を病害ごとにクラス分けを行い、病害検出モデルを作成したと報告した。

画像データは東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどで撮影された。撮影は専門家によって行われているが、撮影デバイスは携帯電話、タブレット、および一般的な RGB カメラである。撮影時間や撮影条件は特に統一されていなく、多様性を持つように撮影されていたという。撮影された約 3 万枚の写真は、その後、3 名の専門家が 4 週間にわたって、バウンディングボックスを付けるなどのアノテーション付を行なっていたという。

病害のクラス分けは、バナナの部位ごとに病害のクラス分けを行なっていた。一般的に植物の病害は、部位によって出たり出なかったりする。あるいは、同じ病害でも発生する部位によって見かけ上の特徴が大きく異なる。そのような病害を同じクラスとして扱うと、病害検出モデルの検出性能が悪くなる。これを防ぐために、論文の著者らは、各病害を部位ごとにグループ分けを行なった。例えば、葉のグループでは「健康な葉」、「バナナキサントモナス萎凋病を持つ葉」、「フザリウム萎凋病を持つ葉」など、偽茎のグループでは「健康な偽茎」、「バナナキサントモナス萎凋病を持つ偽茎」、「フザリウム萎凋病を持つ偽茎」などのようにグループ分けを行なった。

次に、各グループに対して、病害検出モデルを作成した。彼らは複数の深層学習アーキテクチャを適用したが、最終的に Faster R-CNN + Inception V2 および Faster R-CNN + ResNet50 の性能が最もよかった。つまりに、葉のグループに対して、この 3 種のアーキテクチャを学習し評価を行い、次に偽茎に対してもこの 3 種のアーキテクチャを学習し評価を行う、という作業をすべての部位に対して行った。病害の判定精度は 70-90% でばらついている。この病害検出モデルを使って、農家の意思決定をサポートできることに期待を寄せている。

ムギダニの検出

小麦の葉に付いているムギダニを検出するために、深層学習の手法が使われている(Li et al, 2019)。この問題の難しい所として、ムギダニが非常に小さく、検出するのが難しいというところにある。

この論文の著者らは、フィールドで撮影した 84 枚の 1440x1080 サイズの画像を訓練データと評価データに分けた後、1440x1080 の訓練データから様々な大きさの画像(150x250, 240x400, 300x500, 600x1000)を切り出して、回転・反転したりノイズを加えたりして、訓練データを増やした。最終的に 84 枚の訓練データから 3400 枚の画像を作り出した。これらの画像は最終的に、600x1000 にリサイズして訓練データとして使用された。

検出用の深層学習アーキテクチャとして ZF model と RPN model を組み合わせて使っている。ZF の部分は特徴抽出器として利用され、RPN の部分は領域検出と物体分類に使われている。論文の中では、ZF と RPN 以外の組み合わせ、例えば Faster R-CNN + VGG16 や SSD + VGG16 についても試したが、実行時間と予測精度のトレードフを見て、ZF + RPN が最も良かったという結論づけている。

References

  • Selvaraj MG, Vergara A, Ruiz H, Safari N, Elayabalan S, Ocimati W, Blomme G. AI-powered banana diseases and pest detection. Plant Methods. 2019, 92:4641. DOI: 10.1186/s13007-019-0475-z
  • Li W, Chen P, Wang B, Xie C. Automatic Localization and Count of Agricultural Crop Pests Based on an Improved Deep Learning Pipeline. Sci. Rep. 2019, 9:7024. DOI: 10.1038/s41598-019-43171-0